小説「ロシアン ルーベッド」の御案内

小説「ロシアン ルーベッド」の御案内 不定期になってしまうと思いますが、小説第2作目として逐次 「ロシアン ルーベッド」 を発表していきます。 まだまだ粗っぽいので、ときどき「後出し推敲」させていただきますね。 ブログURLは以下のとおりです。 http…

5章 輪廻転生 1章 惜別  2節 方針

【中略】 5章 輪廻転生 1節 惜別 愛の嵐のあと、レイも私も寝てしまったらしい。起きたら身体が冷え切っていた。 「う、寒み!」 『起きた? なんかこういうの、いいね』 すぐ近くにレイの顔があった。 「…だよね。レイ、すごいね、よく調べたなぁ… 逃げら…

魅入られて 4-7節 首領 4-8節 改良

7節 首領 指導蛇キンの全盛期に、世は明治維新を迎えている。キンは知性的かつ理性的で、その割に性格は攻撃的だった。キンが率いる蛇一族は集団での狩りにも熟達し、全体として豊かな生活ができるようになってきた。 ここでキンが考えたのが、人間界への進…

魅入られて 4-6 改変

6節 改変 さて、ここでいう染色体改変とは… 後日レイの分身とレイの仮想的カラダを借りて話したときの情報を交えて確認しておこう。 ヒトの染色体数は46本、一ゲノムはその半数の23本でそのDNAの総延長は約1mである。ゲノム(genome)とは、gene(…

魅入られて 4-4 未練 4-5 蠱惑

4節 未練 私に「これ以上ない」ほどの 仕打ちを遺したアキ、アカネ、ミキの三人。彼女たちの、その気持ちは今もわからない。おそらくこの苦しみは、殺されるよりも苦しいに違いない。でもまだ、私の心の底には愛情がくすぶり、煙を上げている。三人が蛇ウイ…

魅入られて 4-3-2

仮説 3.逆翻訳・逆転写ウイルスが未発見だったのは、実在しないからだ。 「病気」は検査されるが、幽霊を見たからといって、ウイルス感染を疑うことはない。頭の中身を疑われることはあるだろうが… 一見正常に見える人でも、実はこうした恐怖ウイルスの感…

魅入られて 4-3-1 仮説

3節 仮説 そのあとしばらく布団から出ることができなかった。 免職必至という状況だけでも十分衝撃的なのに、私の中にすでにパラサイト(寄生者)が入り込んで勝手に思考や身体を操っていること、幽霊の正体の一端を掴んでしまったかもしれないこと。 おーま…

魅入られて 4-2-1 酵素

2節 酵素 「ねぇレイ、もう少し聞いてもいいかな?」 『何? ああ、当分テンテからは離れないよ』 「くそっ… じゃあ幽霊さんには実体はないの? 幻覚幻聴全部が自分の脳の産物なの」 『さあ、テンテは自分がどういう生物だかわかってるの?』 「ははは、よ…

魅入られて 4章 大進化説 1節 感染

4章 大進化説 1節 感染 レイから聞き取ったことを並べてみよう。 ちょっと早目に正体を明かしてしまったけど…と自嘲して、レイというその霊的存在が語り始めた。まず彼女は澤風トンネルに棲まっていた存在であり、私の数代前の直系祖父の霊波と酷似してい…

魅入られて 3-8 半裸

8節 半裸 今日も肩が重い。いや今朝はひときわ重い。もう少し寝てしまおうか、どうせ今日の午後は事情聴取なのだ。 それでもグダグダし続けて良いものだろうか。起きなくちゃ。布団の中で大きく伸びをした… 「ああ~ あっ」 途端に激痛、左足がツってしまっ…

魅入られて 3-6 家族 3-7 縁起

6節 家族 こりゃダメだ。教職を続けられる見込みは100%ないだろう。 実のところ、給料と退職金に未練はあったけど、【この学校で】同じ仕事を続ける気はほとんどなかったのである。ここに至ってやむなくヨメ殿や息子、そして母にも自分の嫌疑を明かし、将…

魅入られて 3-5 告発

5節 告発 一月。 やはり…動きがあった。 まさかとは思いながらも、最も恐れていた事態だった。いや、そんなことあるワケがない。あんなに慕い、頼ってくれた娘たちなのだ。 またまたまた事情聴取… 今度ばかりは…もう二度と生徒とは合わせてもらえない完全隔…

魅入られて 3-4 年末

4節 年末 夏休みもそうであるように、冬休みにも補講がある。ありがたいことに三者面談はないので、午後は比較的落ち着いた時間を過ごすことができる。冬休みに入って、理科準備室への来客が増えた。来るのはたいていイツメン(いつものメンバー)である。 …

魅入られて 3-3 連日

3節 連日 12月上旬、なんとか平穏を装った冬休みを迎えることができそうだった。しかしここまで使った教材の反省・手直しと3学期の教材準備は、なるべく完了させておきたかった。 そんなことを知ってか知らずか、ミキは毎日のように準備室にやってくるよ…

魅入られて 3-2 仲裁

2節 仲裁 ここ3日ほど、なぜか誰とも連絡を取っていなかった。 強いて言うなら、なんとなく不吉な気配を感じていたから… としか表現できない。 なぜか、連絡を取るのが怖い感情が先に立ち、夢中になれない醒めた自身を意識するようになってきたせいもある…

魅入られて 第3章 1節 転進

3章 悪戦苦闘 1節 転進 アカネとの関係は自然に休止になった。まさかお見舞いに行くワケにもいかない。SNSで連絡をとるのもはばかられる。私はやきもきしながらも、どうにもしようがなかった。 Time will tell … 「時」しか解決できないことだ…

魅入られて 2-9 断章

9節 断章 『そっか…』 沈黙が続く。 『やっぱ…』 「やっぱ?』 『やっぱ、みんな脅されたんだね… やっぱやんなきゃダメなのよ』『うん、でも…』 『でも… でも、家族に迷惑掛けられない。』 『え、でもアタシ彼氏いるし、そりゃかなり気に入ってだけどね、む…

魅入られて 2-8節 爆弾

8節 爆弾 さて、例の爆弾である。 別の例を挙げて説明してみたい。静岡県島田市は、特殊製紙、実験機材、電波兵器などの軍需産業の他に、空中聴音機部隊や飛行隊と飛行場を持ち、中核都市ながらアメリカにとっては攻撃すべき目標であった。 一九四五年七月…

魅入られて 2-7 予知

7節 予知 世は明治、大正、昭和、平成、令和と進み、世相や人心も遷り変わりもまた甚だしい。 和装は洋装に置き換えられ、髷を結うものは絶無と言っても良い。たまに観光地や京都などで見かけることがあっても、それはTVや映画の撮影だったり、エキストラ…

魅入られて 2-6 途絶

6節 途絶 何度目かの「SNS中断と再開」を経て交流は続いていた。そういう点では、私にも責任はあることは自覚している。 ただ、共に相手を想い合っているという確信は、恋は盲目とまではいかないまでも周囲を軽くみてしまうことに繋がってしまっていた。…

魅入られて 2-4 継続  2-5 処分

4節 継続 十月上旬、あのあと教育委員会の沙汰を待つ間に修学旅行があった。 学校にとってすでに「問題教員」だったのに、こういう引率はしっかり行かされた。ほんと行きたくないのにね… 体調管理に自信がない私は、海外とはいえまずます近めの台湾で良かっ…

魅入られて 2-3節 一族

3節 一族 「なぜ… ここ?」 ユキは訊ねた。 …というより詰問した。せっかく独り立ちできたのに… ユキとしては無念だった。 「行け… アオよ」アオが静かに佇むうち、今度はギンが戻ってきた。ギンは小さなカエルを銜えていた。 文明が発達しているはずの人類…

魅入られて 2-2 子蛇

2節 子蛇 こうしてユキを納めた甕は、土のなかで長くゆるやかな時間を過ごすことになる。 甕の上には近くの竹やぶから舞い降りる竹の葉が積もり、成長期のエノコログサやメヒシバが生い茂って、ひと月もすると単なる「盛り上がり」だけが名残りを示すように…

魅入られて 2-1-2

蛇が嫌いという理由として、「まばたきをしないから」と言う方も多い。もともと穴居性のトカゲから進化したのが蛇の仲間と言われている。穴の中では目に入る土や砂を手で払いのけるスペースはないし、トカゲの手はそこまで長くはない。手は引っかかるし、そ…

魅入られて 第2章 因果応報 1節 冤罪

2章 因果応報 1節 冤罪 この地方の某所に、昔は蛇塚(くちなわづか)と言われた場所がある。 今は近代的で素敵な地名になりかわり、地元民でさえ元の地名を知るヒトは少ない。近くの台地にはやや有名な神社があり、古代から少なからぬ民が暮らしてきたこと…

魅入られて 1-9 脅迫

9節 脅迫 『首領、二か月ぶりですね… 参りました』《アカネ、たくさん、呼んだ。なぜ、来ない》『ごめんなさい。言われた仕事…できなかったんです。ごめんなさい』 首領は舌先でアカネの上アゴ奥にあるヤコブソン器官をまさぐっている。アカネは小さい声な…

魅入られて 1-8 澤風

8節 澤風 九月の終わりとは言え、まだ汗ばむほど充分に暑い。SNSは自粛を求められるわ、管理職には睨まれるわ、アカネとは前のように連絡できないわ… そんな事情で、私は気分転換を試み、一人で出掛けてみた。 嫁どのは趣味の集まりがあるとかで、早い話…

魅入られて 1-7 発覚

7節 発覚 九月下旬のある日、教頭がわざわざ触れるほどすぐ近くまでやってきて、小さな声で私に告げた。『今手が空いてたらね、ちょっと応接室まで来てください。』 おー まいがっ ! きた、ついにきた… 呼ばれた用件はすぐに見当がついた。やはりアカネの…

魅入られて 1-6 事変

6節 事変 遠足の朝、アカネは理科準備室前の棚にこっそりと弁当を差し入れてくれていた。味付けは薄めで、健康的だった。鶏の唐揚げを中心に、卵焼き、ポテトサラダ、スナップエンドウ、トマトに切り干し大根などのノリ弁で、色目もバランスも申し分なかっ…

魅入られて 1-5-2

このころのアカネは、平日は忙しいのかほとんど連絡を寄越さなかった。心にゆとりがあるときなのだろうか、そんなときまるで思い出したかのようにたくさんの連絡をくれた。これはこれで二人のためでもある。意識はしていても、あまりにべっとりくっつかない…